プロジェクトラーニング 探求学習

プロジェクトラーニング 探求学習1

プロジェクトラーニング(Project Based Learning)とは、課題解決型学習とも呼ばれる学習法のことです。算数、国語など特定の科目を勉強するのではなく、プロジェクトや目標達成のために取り組む学習方法のことをいいます。

プロジェクトの目標を設定して、その目標を実現しようと考え行動するなかで、思考力や実践力など様々な力を身につけることができます。またグループで課題解決へ取り組むことで、コミュニケーション力や課題探求力、自己表現力なども養われていきます。
結果よりも目標実現へ向けたプロセスを大事にする教育法で、文部科学省で推奨されているアクティブラーニング(主体的・対話的で深い学び)のひとつとして、近年教育界で注目されています。

プロジェクトラーニング 探求学習2

プロジェクトラーニング 探求学習3

「Suiだからこそできること」で紹介した「地頭の良い子ども」の「地頭」とは、「その人本来の頭のよさ」を意味する言葉です。論理的思考力やコミュニケーション能力などを表します。地頭が良い人とは、考察力や判断力などに優れ、自ら考え抜く能力を持っている人のことです。また、他者の気持ちを察する能力に優れ、円滑な人間関係を築くのが得意な特徴を持っています。

Suiでは、プロジェクトラーニングを通して、自分たちが「知りたい」と思うことについて、皆で協力して意見を出し合い、探して、試して、研究して、相手の意見を尊重しながら、自分の意見を伝えていくことを経験し、「知りたい」ことを納得いくまで自分たちで考え抜いて解決していくこの探求学習を日々の保育の習慣としているため。子ども達は、Suiでの生活の中で地頭の良い子どもに育っていきます。

プロジェクトラーニング 探求学習4

また、プロジェクトラーニングでは、ソーシャルスキルもとても大切になってきます。
友達と一緒に一つのテーマに取り組み、目標実現していく中で自制心、共感力、コミュニケーション力を養っていきます。
ソーシャルスキルは、幼児期に大きく伸びる力です。プロジェクトラーニングが幼児期に大切である理由の一つは、なんと言ってもソーシャルスキルは、幼児期にこそ大きく伸びる力だからです。「自制心」「他者への思いやり」「人の話を聞き自分の意見も伝える」「建設的な問題解決」などのソーシャルスキルは、人間形成の土台を形成するこの幼児期に必要な力なのです。

これらの能力は、一人での学習や、教師からの一方通行の授業では決して身につけることができません。お友達同士や先生など、コミュニティの中でのやりとりや協働があって初めて身につくのです。

プロジェクトラーニングのテーマは子ども達の言葉や対話、交渉の中から計画されます。
教師は物事の本質を多面的に掘り下げ探求していけるよう、助けていきます。いわばファシリテーターの役目を担います。

授業におけるファシリテーター(教師)は、これまでの一方通行の授業のように知識や解決策を提示するのではなく、子どもが持つ経験値や知識、感情を尊重し、寄り添い、問いかけます。このように子どもの興味・関心や主体性を重視することによって、子ども自らが新たなアイディアや問題解決策を発見していきます。そのことが、深い学びができる環境づくりにつながります。

プロジェクトラーニングの紹介

Kindergartenが進めたプロジェクトラーニングを紹介しましょう。

「BIG」プロジェクト

「BIG」プロジェクトは、その前に進めていた「SEED」プロジェクトで、狭いプランタで種から育てたひまわりが死んでしまったことから始まりました。

子ども達は、ひまわりの苗はなんで死んでしまったかを知りたいと言い、私たちは植物の専門家をお呼びしました。専門家の先生は、もう少し大きなサイズのプランタが必要だったと、死んでしまった理由の一つに「大きい」ということを伝えてくれました。
そこから、「大きい」ってどのくらいなの?と子ども達が不思議に思い、様々な大きさを調べたいという声があがり、「BIG」プロジェクトはスタートしました。

みんなが大好きなブロック「カプラ」を使って、様々なものは「カプラ何個分」の大きさでできているのか、考え意見を出し合い、実際に調べ、比較、統計を出しました。

「世界一大きいもの」もこのカプラで大きさを調べられるかと子どもが言いました。
この言葉を教師は逃しません。「世界一大きいもの」って何だろう・・と子ども達の道筋をつけていきます。
ある子どもが「世界一大きいお花」と言いました。「世界一大きいお花はなんだろう」子ども達が本やインターネットで調べ始めます。
「ラフレシア」という名前がわかりました。
「直径1メートルの花」とありました。子ども達から「直径1メートルってどのくらい?」という質問に教師が紐で1メートルを見せました。

子ども達はカプラで何個分なのかを知りたくなり、みんなでカプラを並べ始めました。「カプラ10個だ!」と子ども達は発見し、直径1メートルの円をカプラを使って作り、新聞紙で花を表現し世界一大きいラフレシアの実物大の作品を作りあげました。
また、子ども達は世界一大きなラフレシアが咲くjungleには、きっと大きなダイナソーがいるに違いないと活発な意見交換をしたのち、自分たちと同じ年齢(5歳)の恐竜をラフレシアと一緒に存在させてたいと、大きな紙を何枚も繋げ作り上げました。

このプロジェクトでは、カプラを使って様々なものの長さを図り、比較しグラフをつくるなどのMath(算数)、世界一大きい花の特徴やどの地域にあるかなどを調べるScience(理科)、そしてその調査結果をノートに記録していくliteracy(読み書き)、最後に大きなラフレシアを表現豊かに作りあげたことでArt・Craft(美術)と、様々な教科をつなぎ目なく学んでいきました。

「RECYCLE」プロジェクト

子ども達は「BIG」プロジェクトのラフレシアからダイナソー、そしてそれらが生きているjungleに興味をもち探求していきました。そして、jungleで聞こえる音から、その音を自分たちで作ってみようということになりました。
ペットボトルにどんぐりや、ちいさな貝殻、お米や小豆、色々なものを入れて自分だけの音をつくっていきました。
Jungleで聞こえてくる様々な音を表現したあと子ども達は言いました。「ペットボトルを捨ててしまうのはもったいないね」そこで、「RECYCLE」プロジェクトのスタートです。

このプロジェクトは数か月続くプロジェクトとなりました。
「RECYCLE」とはなんなのか、自分たちができることはなにか・・・子ども達それぞれの意見が出ます。
日本語の時間を使って、お家からでる生ごみはどうなっていくのか紙芝居で学びました。
子ども達は言いました。「私の家もたくさんの食べもののごみがでるよ」と。
そこで、子ども達はこの食べ物のごみを減らすことを考え始めました。
そこでインターネットを使って食のサイクルをしり、生ごみが野菜を育てるために活かされることをしり、「Compost」の存在を知りました。家から生ごみを持ち寄って子ども達のCompost作りが始まりました。良い土を作るにはミミズなどの生き物も必要だということを研究で知り、公園に取りにも行きました。

良質なCompostを作る方法をしった子ども達は、その土を使って野菜作りに挑戦したいと言い始めました。持ってきたlunchの中にあったトマトがその挑戦の始まりでした。トマトの種をしっかりと乾かしてドライにした状態にしたものと、そのまま濡れている状態のものの2種類で育つかどうか・・を実験し始めました。

教師は、子ども達の意見の道筋がずれていかないよう、多少の軌道修正と少しのアドバスで子ども達の意見を尊重し、実現するための手伝いをします。
答えを教えたり、指導することはしません。

これと同時にSuiでは、Art exhibitionという大きなArt展を控えていたため、RECYCLEできるもので自分たちにできる作品は何かも考えていました。
子ども達から、「牛乳パックでイスやテーブルをつくろう」「いらなくなったビンでflower baseをつくろう」「ペットボトルでChristmas treeをつくろう」「ペットボトルのキャップで自分のたいせつな世界をつくろう」とたくさんのアイディアが出ました。

子ども達はそれを一つ一つ実現させたのでした。

「BODY」プロジェクト

「BODY」プロジェクトは、「RECYCLE」プロジェクトで生ごみをどのように活かしていくかの中で、子ども達から「食べたものは自分たちの体の中でどうなるんだろう」という声があったことを教師が取り上げ始まりました。
子ども達は、日本語の授業でかこさとしさんの「たべもののたび」で食べ物がどのように体の中で栄養になり、いらなくなったものは外に出されるのかを知りました。
また、いままでしらなかった臓器の名前を英語ではなんというのかを調べ始めました。

自分が食べ物だったら体の中をどのようにめぐっていくのかをやってみたいという声から、体の中の特徴と食物の流れなどを研究したのち、自分たちが好きな食べ物になって口から入り、食道を通り、胃から腸と進みうんちになって外にでていく様を経験していきました。

このプロジェクトでは、open classで保護者の皆さんにも、食べ物が口から入ってどのように進んでいくのか、子ども達の意見やアイディア、実験の様子に参加して頂きました。

また、「食べ物をしっかりたべないと病気になるよ」という意見から、Doctorにいろいろな病気や人の体のしくみについて聞いてみたいということになりました。
Suiの保護者でいらっしゃるDoctorに子ども達の依頼をお願いしたところ、快く引き受けてくださり、子ども達の様々な質問に答えていただきました。
子ども達は質問を考えるだけではなく、この質問に対して自分の意見はこうだという形でDoctorに質問をしていきました。

BODY プロジェクトでは、たまごを使って歯の硬さや健康についても研究しました。

活動報告

プロジェクトによっては、1年以上かけて取り組んでいくものもあります。
こちらでは活動報告として、子ども達が、何に関心を持ち、どのように発展・帰結したかをまとめております。
子ども達の瑞々しい感性が、専門知識のあるファシリテーター(教師)の細やかな観察による問いの投げかけによる広がりで、深い考察と理解、そして経験を得たことが感じられます。